鮭、サーモン、鱒の違いについて、お寿司のネタになっているサーモンとは、またスーパーで売っているトラウトサーモンとは
スーパーやデパートの生魚コーナーへ行くと、「塩鮭」や「サーモン (刺身用)」と書かれたパック詰めをよく見かけますが、鮭もサーモンも同じ「鮭」のことではないのかと疑問に思ったことはありませんか。
現在日本国内で食用流通している鮭は、
・白鮭
・紅鮭
・銀鮭
・カラフトマス
・サクラマス
・ニジマス
・キングサーモン
・アトランティックサーモン
以上8種類存在します。
では、白鮭・紅鮭・銀鮭が「鮭」、キングサーモンやアトランティックサーモンが「サーモン」なのかと言われると、そうでもありません。
鮭は、それぞれ商品名や原産国ならではの呼び方などがあるため、少々ややこしくなっており、さらに生態学や学名などで分類してしまうと、より一層複雑さを増し、どれが「鮭」で何が「サーモン」なのか分からなくなってしまいます。
そこで、今回は「鮭」「サーモン」「鱒」それぞれの違いについて分かりやすくご説明します。
鮭・サーモン・鱒の違いとは?
- 鮭
鮭とは、白鮭・紅鮭・銀鮭などのサケ科サケ属に属する魚のことを指します。
主に朝食やおにぎり、お弁当などに用いられる魚であり、なかでも白鮭は古くから日本の食卓を彩る定番魚として愛されています。
ただ、スーパーやデパートの生魚コーナーで見かける、切り身や塩鮭、燻製として販売されている鮭は、白鮭ではなく紅鮭と呼ばれる種類の鮭であり、アスタキサンチンが豊富に含まれているため、鮮やかな紅色の身をしています。
- サーモン
サーモンとは、一般的に大人になるまで海で生活し、産卵期を迎えると生まれた河川へと遡上する「鮭」のことを表す言葉なのですが、日本における「サーモン」は「鱒」のことを指します。
なぜ、日本では「鮭=サーモン」ではなく、「鱒=サーモン」となっているのでしょうか。
昨今、日本国内で問題となっている食材虚偽表示問題を受け、消費者庁は「メニュー表示のガイドライン案」を外食業者や消費者団体などと協議した結果、シャケ弁当や寿司ネタのサーモンなどに使用されることの多い「サーモントラウト」が不適切な表示として認められました。
サーモントラウトは、海面養殖用に改良されたニジマスのことであり、主に南米チリなどで養殖されているサケ科の魚です。
英語圏では、淡水と海水を行き来するサケ科の魚を「サーモン」と呼び、淡水のみで生活しているサケ科の魚を「トラウト」と呼んでいたのですが、日本では「鮭」のことを標準和名で「サケ」、「サクラマス」のことを「鱒」と呼んで区別していたため、「サーモン=鮭」「トラウト=鱒」と認識するようになったと言われています。
その結果、新たに誕生した海面養殖用のニジマス「サーモントラウト」は、標準和名が「ニジマス」であるにも関わらず、「鮭」や「サーモン」と表示する事態となりました。
日本では、サーモントラウトの他にノルウェー産の養殖サーモン「アトランティックサーモン」や日本ではサクラマスの名で親しまれている「ピンクサーモン」なども「サーモン」という名で流通しておりますので、少々ややこしい状態となっていますが、スーパーやデパートなどで見かける「サーモン」は、
・トラウトサーモン⇒海面養殖用ニジマス
・アトランティックサーモン⇒大西洋ならびにその流入河川に生息する鮭
・ピンクサーモン⇒サクラマス
以上3つに分けられますので、この3種類だけは覚えておきましょう。
- 鱒
鱒は、生物学的には鮭と明確な区別がありません。
現在、「鮭」と呼ばれる魚は地球上に存在しますが、「鱒」と呼ばれる魚は、サクラマス・カラフトマス・ニジマスなど複数の魚を表すための総称となっています。
海外では、河川と海を行き来する魚を「サーモン」、河川など淡水のみに生息する魚を「トラウト」と呼んでいることが多いため、最近では日本でも「サーモン=鮭」「トラウト=鱒」と認識するようにしているところも一部で見られるようになりました。
ただ、日本では古くから遡上がみられる鮭や鱒は、鮭とサクラマスのみだったため、当時は「鮭」「鱒」の区別だけで良かったのですが、蝦夷地開拓や海外との貿易が盛んになると、様々な種類の鮭や鱒が日本へと入ってくるようになり、「鮭」と「鱒」2つだけでは対応しきれなくなり、特別な意味を持つ「鮭」の名はそのままに、北海道や海外からやってくる魚たちに「○○マス」という名を付けるようになりました。
しかし、北海道や海外からやってくる魚たちを流通させるためには、鱒よりも鮭の方が高級なイメージを持っていたため、それまで「ベニマス」や「ギンマス」と呼ばれていた魚たちは、「紅鮭」や「銀鮭」という新たな名を付けて市場に出回るようになったと言われています。
鮭・サーモン・鱒の違いは、生物学的には明確な区別はありませんが、食材虚偽問題の関係もあり、日本では個別に区別されるようになっています。
少々ややこしい問題ですが、基本的には「鮭=サーモン」「鱒=トラウト」と覚えると分かりやすいかと思います。
今回は鮭・サーモン・鱒の違いについてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
日本を代表する伝統料理「寿司」のネタに用いられている「サーモン」は、ちょっとお安いお寿司屋さんや回転寿司などでは「トラウトサーモン」、ちょっぴり高級なお寿司屋さんでは「白鮭」を使っているそうですので、気になった方は、この機会に2つのサーモンを食べ比べてみてはいかがでしょうか。