厚生労働省では公式ホームページに放射性物質が検出された170種類を超える農林水産物が掲載されています。また、環境保全団体「グリーンピース」による独自調査では海産物に深刻な被害が及んでいることを発表し、注目を集めました。
ネットでは、「被災地の野菜や魚を食べない方が良い」「外食のお米や露地栽培のキノコは危ない」「神奈川県から宮城県までの太平洋側の都県の川魚、神奈川県から北海道までの太平洋側の海魚は放射能汚染の恐れあり」と書かれており、関東以北の地域の農林水産物を食べたくないという人が増えています。
そこで今回は放射能汚染が最も心配されている「マグロ」にスポットライトを当てて、健康被害や妊娠中に食べた時に考えられる影響をまとめてみました。
マグロと放射能汚染について
福島第一原子力発電所の沖合を回遊するマグロから検出された放射能についてアメリカ・科学アカデミー紀要に掲載された研究にて、ダニエル・マディガン氏とニコラス・フィッシャー氏の両名は、アメリカ南西端にあるサンディエゴ沖合で漁獲されたクロマグロ15匹から通常の10倍もの放射性セシウムが検出されたことを明らかにし、福島原子力発電所事故から放出された放射能汚染による明確な証拠だと指摘しました。
しかし、研究者たちによると「セシウムは微量であり、人体に対する影響はほぼ無い」としており、フィッシャー氏は「セシウムは食物連鎖の過程で濃縮されてゆく性質があり、クロマグロは1日におよそ2%の割合で体外へと排出するため、汚染度合は女世に低下してゆく」と述べており、さらに「エサとなる魚の汚染度合や最終的には水の汚染度によるため、水の汚染度合が低下することで希薄化と拡散によって生体内の放射能は低下して行くだろう」と話しています。
ただ、マディガン氏は「日本近海に生息する小型の魚たちの中には原発事故後、放射能汚染度が非常に高かったものも多いため、汚染度の高い魚をマグロが食べてしまうと汚染数値が高い個体が出る可能性がある」としています。
マグロの放射能汚染について世界各国の研究機関が調査・研究を行っており、アメリカ・オレゴン州にあるオレゴン大学では福島原発事故後よりマグロの放射線量が通常の3倍にまで上昇しており、特に4歳以上のマグロから高い頻度で放射能汚染が確認されたと発表しています。
年齢が高いマグロは年齢の低いマグロに比べて長距離の移動が可能であり、時間の経過と共にさらに多くのマグロが放射能に汚染されてゆく危険性があるとしています。
アメリカ政府は「今のところ基準値を超えるマグロは存在しない」と発表していますが、海水の放射能汚染を改善する手立てが存在しないことから、基準値を超えるマグロが発見されるのは時間の問題だとしています。
カナダのベットフォード海洋研究所が発表した論文「福島の放射能汚染物が北アメリカ大陸の水域に到達した」によると、福島原発事故前は1.5ベクレル/立方メートルに留まっていた放射能汚染が2014年には2ベクレル/立方メートルに上昇し、採水した海水の放射性物質を調べたところ核種の比率や半減期などが福島原発事故由来の放射性物質であることが明らかにされました。
これを受け、ベットフォード海洋研究所は放射能汚染の影響を調査するプロジェクトチームを立ち上げ、カナダの太平洋側26地点に水質汚染調査ステーションを設置し、調査を行った結果、2015年に汚染のピークを迎え、その後は徐々に汚染が低下してゆく見通しであることを明らかにしました。
妊婦さんへの影響について
放射能汚染の可能性のあるマグロですが、日本では暫定基準値を下回る食品の場合、「ただちに健康に影響を及ぼさない」としており、基本的には毎日食べても問題は無いのですが、逆に言うと「いつかは健康に影響が出る」とも取れるため、妊娠中の女性を中心に不安の声が上がっています。
ただ、日本では妊娠中はマグロを食べるのは控えた方が良いとしておりますので、滅多なことが無い限り、妊娠中にマグロを食べる女性はいないでしょう。
なぜ、妊娠中にマグロを食べることを控えた方が良いのでしょうか。
マグロには胎児に悪影響を与える「メチル水銀」が僅かではありますが含有されています。
「妊娠初期にマグロを食べてしまったから赤ちゃんが心配」だという女性もいると思いますが、マグロに含まれるメチル水銀は胎盤を通じて胎児へと運ばれるため、胎盤が完成する妊娠4ヶ月頃までならば食べても胎児に影響はないと考えられていますので、妊娠に気付いた段階でマグロを食べるのを控えるようにしましょう。
今回はマグロの放射能汚染を中心にご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
放射能汚染から健康を守るためには、
・魚は塩茹ですると放射性セシウムが70%除去できる
・排出や免疫力向上に効果的なスピルリナを摂取する
などの対策を取ることで、放射能汚染から体を守ることができます。
汚染された農作物や海産物を詳しく知りたい方は、厚生労働省や専門機関、各自治体の公式ホームページなどで確認することができますので、ネットの書き込みに惑わされず、正しい情報をもとに日本各地のおいしいものを食べるようにしましょう。